それは私が将来の安定を求め、某検定試験の勉強をしていた時の事。とある職業訓練に、特別講師がやって来た。要約すると、とってもキャラの濃い、良い声のおじさま。
かつてはアナウンサーを目指して専門学校に通っていたそうだが、結局はなれず、でも声の良さを武器に近年になってローカルではあるがナレーションだのTVCMだの、声の仕事を多数しているという。
その方が言い放った。
「進路を決めて邁進している皆さんには申し訳ないですが、実は僕は多くの方々に本当にやりたい事を気づかせてしまうようなんです。あなた達の未来を変えてしまうかも知れません」
ふーん…。って、思ったよ?
ぶっちゃけ声フェチだから、いい声なのは認めざるを得なかったけど。
その講義内容は結局「自分の好きだと思う事をしろ」というもので、成程、これに感銘を受ければ進路も変わるだろうという感じ。
しかし、そんな事より安定なんだよ!!と、思っていた私。
そしてその後にその方が『話し方講座』なるものを開く事を知り、有料ではあったが、どうしても気になって参加したのです。
話し方講座というだけに、内容はより基本的な事でした。
簡単な体操を行い、身体をほぐした上で、まず大事なのは腹式呼吸だという。
二人一組になり、腹式呼吸を使った発声練習。「あ、え、い、う、え、お、あ、お」アレです。
申し訳ないが、その程度なら10代からやっている私。
ところがどっこい、こういう講座に参加される方々には困難な事のよう。
「いい声ですね。あの…何で出来るんですか?」
私と偶然組になったリタイア世代のおじさまに素で聞かれた。
「学生時代演劇部に居たんで」とか答え、「どうしたら出来るんですか?」と突っ込まれて軽くレクチャーしたりした。
そして、細かい発音のポイントや、その他色々あったあと、今後の自主練習として絵本の朗読を提案され、一度やってみましょうと、全員で朗読をしたのです。
で、私の番が来て、指定の箇所を読み上げた瞬間…。
「いいですね!!」と、先生が言うと同時に「いい声」と、口々に…。場内が騒めく…。
マジですか…。若干私は引いていたかも知れない。
正直、昔より声が出せなくなったと感じていたのに。それでもまだ、そんな事言って貰えるのか。
何故か複雑な気持ちでその日は終わった。
でももしかしたら、今後あの先生にも、再開したりするのかも知れないね。
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